【テンポの誤解】モデラートの速さはメトロノームいくつ?

メトロノーム 疑問・質問

レッスンで質問がありました。

「この曲はモデラートですね。モデラートはメトロノームでいくつになりますか?」

…あぁ、その質問に数字で明確に答えることはできないのです。

なぜならば、音楽用語のテンポの指示とメトロノームの数字は、きっちり一致するものではないから。

今回は、ブルグミュラーやギロックといった学習者向けの楽譜を例にしながら、テンポの音楽用語の意味とメトロノームについて書いてみます。

『モデラートだから♩=90』ではない

「テンポを安定させるためにメトロノームに合わせて弾いてみましょう」とか、「この練習曲は♩=120を目標に」などと言いながら、メトロノームを使ってもらうことがあります。

楽譜にあるイタリア語の音楽用語の意味を説明しながら、「この曲は急がず、もう少しゆっくりの方が良いですね」とアドバイスをすることも。

そこで出てくる質問が、

「Moderato(モデラート)ってメトロノームでいうと、いくつですか?」

オンラインレッスンの場合、ご自宅のメトロノームを手にとって、

メトロノーム

「モデラートということは…あっ!90なのですね!」

メトロノームのMODERATO(モデラート)横の数字で、ひとり納得されてしまうことも。

せっかく数字を探しあてたところ申し訳ないのですが、音楽用語のテンポは単純に数字化できるものではなくて…

テンポには2種類の表記がある

曲のテンポの表し方として、楽譜には2種類の表記があります。

Andante(アンダンテ)イタリア語で『歩く速さで』の意味、のように音楽用語としてしめす場合と、♩=86や♪=120など、音符の単位ごとに数字でしめす場合です。

楽譜によっては、そのどちらもが併記されているものもあります。

モデラートの速度は66から152まで??

Moderato(モデラート)は、『中くらいの速さで』『速くも遅くもない速さで』『ほどよい速さで』などと訳されます。

意味を知ったところでも「中くらい、ふつうの速さって(・・?)」と、抽象的すぎてわかりにくいですよね。

参考例として、音楽用語と数字の速さが併記されている楽譜の例を見てみましょう。

ブルグミュラー25の練習曲の「無邪気」「優美」「やさしい花」は、すべてモデラートの指示があります。

使用楽譜→ブルグミュラー25の練習曲

こちらの東音企画の楽譜は、オリジナル(原典)のテンポと、学習者に合わせたテンポを並べて表示しています。

モデラートは♩=66から152まで範囲が広〜い?!

モデラートという「中くらい」のテンポといっても解釈によってこんなに差があるんだ!(◎_◎;)と驚くかもしれません。

あとで速度の指示を変えたギロック

続いては、ギロックの作品から。

叙情小曲集は、むかし出版されていた版と現在手に入る改訂版では、テンポの指示が変わった曲があります。

使用楽譜→ギロック 叙情小曲集

「人魚の歌」。♩=about 92の指示が、改訂版では♩=about 76に変更されています。

「音もなく降る雪」では、テンポ表記の単位も変更されています。

ふてん4分音符=about 40の指示が、改訂版では8分音符=about 84と変更されています。

具体的に数字が変わっても、テンポを表す音楽用語の英語のSlowly(ゆっくりと)は、まったく変わっていません。

「振り子型メトロノームの誤解」あるある

というわけで、

メトロノーム中央の音楽用語は、単純に真横の数字とイコールだとは思わないように!

「ラルゴって、アダージョよりゆっくりのイメージ」のように、音楽用語だけを縦に比較対象としてみてください。

「アンダンテは♩=69、プレストは♩=180」みたいに、振り子型メトロノームのせい(?)で誤解をしているピアノ初心者の大人やお子さんに、過去何度も出会ってきました。

まぁ、まぎらわしい書き方ではありますよねぇ。。。

テンポ設定で迷ったら?

つまり『モデラートだから♩=90』などと、単純に言い切ることはできません。

同じ音楽用語だとしても、時の流れによってテンポ設定が変化することもあるし、音符の単位の取り方によっても変わるものだから。

じゃぁ、どうテンポを設定したら良いの?

と疑問に思ったときは『イタリア語(音楽用語)の本来の意味を調べてみる』。まずは、そのイメージを大切に。

もちろん、レッスンでも相談しましょうね。

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