ヘンデル作曲の「私を泣かせてください」、イタリア語ではLascia ch’io pianga(ラッシャ キオ ピアンガ)。
すすり泣きを表現する休符のリズム、シンプルなメロディが何度も繰り返される、美しいオペラアリアです。
この曲を映画やドラマで聴いたことがある方も多いかもしれません。
今回は、原曲や歌詞の解説とピアノソロにアレンジされたおすすめ楽譜を、難易度別に3つ紹介します。
映画「カストラート」で主人公が歌ったアリア
「私を泣かせてください」は多くの映画やドラマで使われていますが、個人的には1995年公開の映画「カストラート」が強く印象に残っています。
カストラートとは、去勢によって少年のような高い声を維持した男性ソプラノ歌手のこと。映画は、実在したカストラートのファリネッリをモデルにしています。
主人公ファリネッリの歌声「私を泣かせてください」が、劇場の聴衆を興奮させる場面があり、映画のハイライトとなっています。
アリアの場面だけでなく、バロック時代の風俗と衣装も興味深い映画です。機会があればぜひご覧ください。
ただ…
ストーリーは大人向けだった記憶があります。お子さまと鑑賞するなら少〜しご注意を。
原曲と、複数ある日本語の曲名
原曲はオペラ「リナルド」のなかのアリア。ソプラノ歌手とオーケストラによって演奏されます。
Lascia ch’io pianga(ラッシャ キオ ピアンガ)はレチタティーヴォのあと、アリアの最初のことばです。

歌詞の上5行はアリアのレチタティーヴォ部分、下4行がアリア部分になります。
日本語訳の曲名は「私を泣かせてください」のほか「泣かせてください」や「泣かせたまえ」など出版社によってさまざまで、統一されていません。
こういう日本語タイトルが定まっていない曲は、楽譜を探すときなど検索に手間がかかって少々面倒だったりします…(・_・;
音楽を専門とする人同士では、イタリア語の「ラッシャ キオ ピアンガ」をそのまま曲名として言うことが多いですが、あまり一般的ではありません。

原曲はヘ長調です。
「私を泣かせてください」の曲名からは暗い短調の曲をイメージしてしまいそうですが、実は長調で作曲されている曲なのです。
劇的な感情は前半のレチタティーヴォでセリフとして吐き出し、後半のアリアでは抑制された嘆きのような曲調となっています。
レチタティーヴォについては【オンブラマイフ】のブログ記事↓にも書いています。
今回紹介するピアノソロ楽譜3つはすべてアリア部分のみ、原曲と同じヘ長調のアレンジです。
【初級】「泣かせてください」ヘンデル・ピアノ名曲集
今回紹介するなかで一番やさしいアレンジは、ドレミ楽譜出版社ヘンデル・ピアノ名曲集の「泣かせてください」。編曲は小池孝志氏。
原曲のアリア後半「私の苦しみに対する…」の部分は省略されている、シンプルなアレンジです。

音の数もしぼっていて少なめなので、弾きやすいでしょう。
シンプル過ぎて少々ものたりなく感じるなら、3番目に紹介する楽譜kmpのクラシックを弾きたくて 世界名歌編の「泣かせたまえ」が良いかもしれません。
使用楽譜→ヘンデル・ピアノ名曲集 ドレミ楽譜出版社
他には「ハレルヤ」や「ラルゴ」(オンブラ・マイ・フ)、「サラバンドと変奏」などが収録されています。
ヘンデルの人気曲「泣かせてください」と「ラルゴ」(オンブラマイフ)の両方が入ったお得な楽譜ですが、「ラルゴ」は中級アレンジです。難易度には差があります。
【初中級】「私を泣かせてください」ワンランク上のピアノ・ソロ おとなのピアノ曲集
続いては、デプロのワンランク上のピアノ・ソロ おとなのピアノ曲集から。
こちらのアレンジも、原曲のアリア後半の「私の苦しみに対する…」のメロディは省略されています。
左手をピアノ向きのなめらかな伴奏形に変えていて、やわらかいイメージとなっています。

こうした雰囲気の曲調がお好みの方には、おすすめのアレンジです。
使用楽譜→ワンランク上のピアノ・ソロ おとなのピアノ曲集 デプロ
映画音楽「ムーン・リヴァー」「ライムライト〜テリーのテーマ」やポピュラー曲「ユー・レイズ・ミー・アップ」、そのほかクラシックなどが中級レベル程度にアレンジされている曲集です。
「私を泣かせてください」のアレンジは、この楽譜の中ではやさしめです。
【初中級】「泣かせたまえ」クラシックを弾きたくて 世界名歌編
kmpのクラシックを弾きたくて 世界名歌編の「泣かせたまえ」は、原曲に一番近いアレンジです。最初に紹介したヘンデル・ピアノ名曲集のアレンジと似ていますが、もう少し和音の厚みがあります。

また、アリアの歌詞部分はすべてが省略されずにピアノソロになっているため、曲の長さも長くなっています。
とは言え、難しすぎないのが【クラシックを弾きたくて】シリーズの特徴ですので、難易度は初中級程度でしょう。
使用楽譜→クラシックを弾きたくて 世界名歌編
シューベルト「アヴェ・マリア」、ベッリーニ「優雅な月よ」、ベートーヴェン「イッヒ・リーベ・ディッヒ」など、オペラアリアや歌曲がピアノソロとしてやさしくアレンジされています。
声楽との共演が好きな自分にとって弾いてみたい曲が多い、うれしい楽譜です( ´∀`)
現在YouTube再生リスト【クラシックを弾きたくて世界名歌編】更新中↓