大人からピアノを始めた生徒さんからよく聞く定番の悩み、質問です。
「仕上がった曲をしばらく練習しないでいると、すっかり弾けなくなってしまいます(>_<)忘れないように練習を続けると、新しい曲のための練習時間が足りません。どうしたら良いのでしょう?」
忙しい大人は練習時間に限りがあるもの。ジレンマですね…
今回は自分の実体験から、レパートリーの考え方とレパートリーを作る効果的な方法について、具体的に書いていきます。
レッスンでレパートリーを作れるの?大人と子どもの違い
最初に「大人からピアノを始めた生徒さんからよくいただく質問」と書きましたが…レッスンの目的は、大人と子どもでは大きく違います。
大人のピアノレッスンの目的
大人のピアノ、とくに大人になってからピアノを弾きたいと思う人の目的は『人前でピアノを弾いてみたい。自分が弾きたい曲のレパートリーが欲しい』ということ。
ピアノレッスンも自分が好きな曲、レパートリーにしたい曲を中心に進めていく場合が多いでしょう。
そんな大人にとって『仕上げて合格となりレッスンが終わった曲も、いつでも人前で弾けるようにしておきたい』という願望は、自然なことですね。
こどものピアノレッスンの目的
それに対してこどものレッスンは、ピアノを習う子ども自身の願望より、保護者や先生に主導権があります。
こどものクラシックピアノのレッスンは、基本このように進んでいくでしょう。
- ある曲を練習して曲を仕上げ、先生にマルをもらう\( ˆoˆ )/
- 少し難易度を上げた次の課題曲を与えられ、仕上げるとマルをもらう\( ˆoˆ )/
- さらに少し難易度を上げた次の課題曲を…(以下略)
レッスン曲は自分が希望したものよりも、先生から与えられる場合がほとんど。
発表会やコンクールでがっつり曲を仕上げることがあっても、イベントが過ぎればその曲の練習はおしまい!その曲を想い出して演奏する機会は、ほぼありません。
たとえば、人前で演奏した曲を数年後に別のイベントでまた演奏しよう〜♪とレッスンを希望するのは、先生に良く思われないことがあります。
「同じ曲ではなく、もっとレベルを上げた曲に挑戦すべき!」「楽をしよう、サボろうとしているの?」という印象を持たれるのかもしれません。
レッスンの目的は「より難しい曲を演奏できるようになること」であって「いつでもレパートリーとして弾ける定番曲を持つ」ではないようです。
「趣味ピアノ」として習っていた人よりも「本格的に習っていた人」の方が、こうしたことが起こりがちです。次々と新しい曲をこなすほうが重視されます。
「こどもの頃に何年もピアノを習っていたのに、いま弾ける曲が一曲もない(T . T)」はよく聞く嘆きですが、それはよくあること。珍しい話ではありません。
効果的なレパートリー習得方法
ここで、少しだけ自分の経験談を…
大人になると、演奏する曲は学生時代とは大きく変わりました。需要がある曲(仕事としてよくリクエストされる曲)は、自然と弾く機会が増えます。そこで分かってきたことがあります。
人前で弾いた機会が増えるほど、その曲を手の内に入れられる、ということです。
【ステップ1】人前で弾く
レパートリーにしたい曲は、ぜひ人前で弾く機会を作りましょう。
自宅の練習100回よりも人前で演奏する1回の本番は、身につくものが大きいです。
いつもよりも曲を深掘りして仕上げることになりますし、上手くいってもいかなくても本番での経験を次に活かすことができます。
「人前で」は発表会のようなちゃんとした機会だけではなく、もっとカジュアルな場でもOKです。
ご家族の前やご友人の前で披露するのも良いし、レッスンで「合格した曲ですがレパートリーにしたいので、久しぶりにココで弾いてみても良いですか?」と言って、先生に聞いてもらうのも良いでしょう。
レパートリーを手に入れるためには必要なのは、聞いてくれる人を意識した非日常の演奏経験(ちょっと緊張して演奏する経験)です。
【ステップ2】定期的に弾く
レパートリーにするには、演奏の頻度も重要です。
自分の経験では「週1回以上は弾く機会があるなぁ」という曲は、そのための練習をしなくてもすぐに弾けますし、「2年おきくらいには仕事で弾く機会があるかも」という曲は、一定期間の「思い出し練習」をすれば、もとのように弾けるようになっています。
そして「思い出し練習」は人前演奏機会の回を重ねるごとに、少しづつ短い時間で済むようになり、仕上げの完成度もより高くなります。
【ステップ3】違った環境で弾く
まずは『いつもの会場とピアノ、気心の知れた人たちの前で、それほど緊張せずに弾ける』のを目指しましょう。
そのあとは可能ならば
- いろいろな会場で
- さまざまな種類のピアノを
- 違う観客の前で
演奏してみると良いでしょう。
環境の異なる場面で同じ曲を弾くことによって、自信を持って安定した演奏ができるようになります。
割り切ったほうが良いこと3つ
曲のレベルは「やさしめ」を
当然のことですが、現在の自分の実力よりやさしい曲のほうが、人前で余裕を持って弾ける曲=レパートリーになりやすいです。
「では、簡単な曲しかレパートリーにならないの?」と思われた方、心配無用です(^_^)
練習とレッスンを続けていけば、実力は上がっていくもの。レパートリーにできる曲のレベルも、自然と上がっていくでしょう。
「背伸び曲」でもレパートリーとしてキープしたいなら
自分にとっての背伸び曲で『いつでも、どこでも、練習なしですぐ弾ける』を目指すのは、ちょっと理想が高すぎますσ^_^;
実力ギリギリいっぱいの曲の場合、一度仕上げられたとしても、その状態をキープするには相応の練習時間の確保が必要です。そのために新しい曲の練習時間が削られてしまっては、困りますよね。
それよりも、一度完成した曲は熟成させて(放置して寝かせて)、ときどき解凍(思い出し練習)と本番の機会を作るほうが効果的です。
解凍にかかる「思い出し練習」の時間は、人前で演奏する機会の回数が増えるにつれて短くなっていくものです。
すべての曲をレパートリーにするのは無理
客観的な曲のレベルとは別に、自分にとっての弾きやすさ、思い出しやすさには差があります。
熟成→解凍をしていくうちに、この作業がスムーズに行く曲、そうでない曲があることに気がつくかもしれません。
たいていの場合、仕上げた曲すべてをレパートリーにはできません。5曲に1曲でも自分のレパートリーとしてキープできれば十分と割り切ってはいかがでしょうか。
また自分の好きな曲、得意だと思う曲よりも「この曲は人前で弾くと、なぜか評判が良いなぁ」と思えるものからレパートリーにする、という方法もアリ!だと思います。