ヘンデルのラルゴ(オンブラ・マイ・フ)。
かつて昭和の時代にウイスキーのCM曲に使われて、クラシックファン以外にも有名となったオペラアリアです。
キャスリーン・バトルの繊細な歌声と癒される風景の組み合わせが、鮮烈な印象を残しました。
このCMきっかけで『オンブラマイフ』という名曲と、ソプラノ歌手キャスリーン・バトルの存在を知った方も多いのでは?
ピアノでも人気の『オンブラマイフ』。今回はシンプルで弾きやすい初級アレンジから、レチタティーヴォ付きの珍しいものまで、おすすめの楽譜を4つ紹介します。
ヘンデルの「ラルゴ」とは?原曲は?
ヘンデルの『ラルゴ』は、オペラ「セルセ」(クセルクセス)の中のアリアです。
「ラルゴ」とは、ゆったりしたテンポを表すイタリア語の音楽用語。
そのため曲名として『ラルゴ』と呼ばれるものは他にもいろいろ…いったい誰のラルゴ(・・?)と思ってしまうことも。。。
いっぽう『オンブラマイフ』といえばヘンデルのこの曲で間違いない!となるので、仕事で演奏するときは『ヘンデルのラルゴ』ではなく『オンブラマイフ』ということが多いです。
↑楽譜によって曲名が『ラルゴ』の場合と『オンブラ・マイ・フ』の場合があります。
『オンブラ・マイ・フ』イタリア語でOmbra mai fuはアリアの最初のことばです。日本語のタイトルとしては『樹木の陰で』や『懐かしい木陰よ』などと訳されます。
オペラの中の『オンブラマイフ』原曲はヘ長調(F dur)ですが、高い声域を得意とするソプラノ歌手はト長調(G dur)を好みます。キャスリーン・バトルが歌っているのはト長調ですね。
少し低めの声の歌手は変ホ長調(Es dur)の場合もあります。
歌手によって調はさまざまなので、伴奏は変ホ長調・ヘ長調・ト長調の3つの調どれでも対応できるようにしています。
今回のピアノアレンジも、3つの調がそろっています。
【初級】クラシックを弾きたくて2
『クラシックを弾きたくて2』に収録のアレンジは原調のヘ長調です。難易度は初級程度で弾きやすいでしょう。
使用楽譜→クラシックを弾きたくて2
【初級】全音ピアノ名曲100選(初級編)
全音楽譜出版社の名曲選のアレンジはト長調。難易度は初級程度になります。
ヘ長調はフラットが1つ、ト長調はシャープが1つ。どちらの調で演奏してもピアノでの演奏難易度は変わりません。
使用楽譜→改訂版 全音ピアノ名曲100選 初級編
全音ピアノピースもあります↓
【中級】ピアノ名曲110選A/ピアノ名曲120選(初級編)など
ドレミ楽譜出版社の『ピアノ名曲110選グレードA』や音楽之友社の『ピアノ名曲120選初級編』に収録のアレンジもト長調です。
これまで紹介した2つのアレンジに比べて、音の厚みがあります。オクターブやオクターブ以上の和音も多く、アルペジオで演奏する箇所も多数。
重厚な雰囲気になりますが、手の小さい人が連続するアルペジオやオクターブの中の音をすべてつかむのは厳しいかもしれません。
そういう私も手が小さいほうです。どうにかギリギリ弾いている感じです´д` ;
グレードA(初級)とされていますが収録曲の中では難しめ。中級程度と考えたほうが良さそうです。
使用楽譜→ピアノ名曲110選グレードA
ドレミの名曲選、全音の名曲選、音友の名曲選は、難易度別に3冊にレベル分けされています。
出版社によって難易度の考え方が違っているようで、まったく同じ曲でも初級に入っていたり、中級に入っていたり…ということがあります。
全般的にはドレミの名曲選が初級(グレードA)の選曲がやさしめで、生徒さんによくおすすめしているピアノ名曲選なのですが↓
このラルゴ(オンブラマイフ)に関しては例外で、全音のアレンジのほうがドレミよりも難易度がやさしくなっています。
ドレミ楽譜出版社のピアノ名曲110選A、音楽之友社のピアノ名曲120選初級編の他にも、おとなのためのピアノ曲集クラシック編2、ヘンデル・ピアノ名曲集などに収録されているアレンジです。
【マニア向け】大人のピアノ いやしのクラシック ラルゴ・アダージョ
最後に紹介するのは『大人のピアノ いやしのクラシック ラルゴ・アダージョ』のアレンジです。
変ホ長調でフラットは3つです。演奏難易度は初中級程度になりますが、ちょっとしたマニア向けです。
マニア向けと思う理由は、アリア(オンブラマイフ〜からの部分)だけではなく、アリアの前にレチタティーヴォ(recitativo セリフを歌にしたような箇所)も付いているからです。
使用楽譜→大人のピアノ いやしのクラシック ラルゴ・アダージョ
『オンブラマイフ』のレチタティーヴォは落ち着いたアリア部分とは対照的に、ドラマティックな音楽になっています。
テンポはメトロノーム通りではなく、ある程度自由に歌われることがほとんど。
声楽を本格的に学ぶ人は必ず学ぶべき部分ですが、一般的にはレチタティーヴォは聴いたことがない人も多いと思います。
レチタティーヴォも演奏したいなら、歌詞の意味もぜひ知っておきたいところです。
「雷鳴や稲妻…」の歌詞にあたる部分はやはり音楽が激しさを表しているのだな、と意識すると演奏の表情も変わってくるでしょう。
全音楽譜出版社イタリア歌曲集1より引用