YouTubeやインターネットの情報を参考にピアノを学ぶ大人の方が増えてきました。情報を調べることによって解決することもあれば、そこから新しい疑問を見つけてしまうこともあるようです。
「あれっ?この先生は自分が習ったこととは全然ちがうことを言っている!どっちが正しいの?」(゚o゚;;
どうすべきか迷ってしまい、先に進めなくなってしまうこともあるかもしれません。
- ピアノの先生によって言うことがバラバラな原因
- 違う意見で迷ったときの判断基準、解決方法
について書いてみます。ひとつの考え方として参考にしていただけたら幸いです。
【その1】相手のレベルに合わせて、アドバイスは変化する
最初に考えたいのは、初心者にわかりやすく教えるために発展部分はあえて省略して説明している可能性です。例を2つあげてみます。
音楽用語スタッカートの意味
スタッカートの場合。
第一段階では「音を短く切って演奏する」の意味を習うことが多いのではないでしょうか。
第二段階では「切ると言ってもどのくらい?軽い感じなのか重い感じなのか?」も考える必要が出てきます。
第三段階では「ほかの部分から分離して目立たせるという意味だから、必ずしも音を短く切るわけではない」という解釈も成り立ってきます。
もしもスタッカートという記号を知ったばかりの生徒さんに、すべてを説明すると(・・?)となってしまうかも?
なので、最初の定義「スタッカートは音を短く切って演奏する」とわかりやすく言うことが多いのです。単純化した説明は切り捨ててしまう部分も出てくるため、その加減が難しいところです(^^;;
メトロノームの使い方
「必ずメトロノーム練習してくださいね」と言う先生は多いと思います。
ところが、ずっと一定のテンポで弾いているピアノ演奏では、かえって不自然さを感じることがあります。まるでAIの音声読み上げソフトを使ったような無機質さ…と言うのでしょうか。人間的な温かみがあって魅力的なのは、自然な息継ぎや揺らぎのある演奏のほうだったりします。
実験として、一流のピアニストの演奏の録音を自分のメトロノームと合わせてみるのも面白いでしょう。どの数字に合わせてもピッタリ合うことはなく、ズレが出てくるはずです。
とは言っても、テンポ通りに弾けないレベルから好き勝手にやっているのは良くないので、段階を踏む必要もありますね。
というわけで、どんなレベルの人に対して言っているのか?が違うと、言っていることも違ってきたりします。
【その2】ゴールが違うのか?ルートが違うのか?
目指しているゴールが違う場合
アメリカ英語とイギリス英語では、発音や単語も違っています。
オンライン英会話で100人以上の先生のレッスンを受けてきた経験がありますが、先生の出身国はアメリカやカナダ、イギリスやインドやフィリピンなどさまざまでした。レッスンで指摘されることも、目指すべき理想の発音も同じではありません。
どれが正しくてどれが間違っている、ということではないのですよね。言語として通じる発音ならば、どれも問題ないわけです。
私の場合は「その先生の国の文化や標準を知る」という意味で、いろいろな指導を受けられて面白かったです。でも「完璧なイギリス発音が学びたいのでイギリス人の先生のレッスンだけ受けたい」という人もいます。その価値観だってアリでしょう。
ピアノの先生の場合でも、そもそも流派のようなものが違っていたり、演奏で目指す理想像が違っていることがあります。
同じゴールでも、選んでいるルートが違う場合
最終的には同じ場所に到達することを目指していても、ルートはいくつもあったりするものです。そうすると、途中で見える景色はまったく違っていたりします。いま見えるものだけに注目してしまうと、迷ってしまうかもしれません。
指導者の立場としては、これまでの自分の経験から一番安心して進めるルートを生徒さんに示すことが多いことと思います。
この解決方法は、「自分のフィーリングに合った教え方をする人、好みの演奏をする人の言うことを信頼して、まねることから始める」が良いのではないでしょうか。
【まとめ】一部分しか見ていないのは誤解のもと
生徒さんからよく受ける質問の具体例としては
- こどものころは『手の形は卵形で』と習ったのですが、それって古いのですよね?
- 楽譜の出版社によって音やリズムが違っているのですが、どちらが正しいのですか?
というものがあります。
上の2つの質問にどう答えるか?と言うと、たぶん生徒さんが求めているような単純明快な答えはしていません。
本の中の一文や、発言のある部分だけを切り取って「これって、どうなのでしょう?」という質問に答えていると、前後の文脈がわかりません。話し手のフィルターや伝え方によって、伝言ゲームのように本質からズレてしまっている可能性もあるので危険です。
また、明確な答えを出すのが難しい質問に対して白黒つけてしまうと、
「先生がこう言ってたからそれでOK!解決!」
と安心してそれ以上考えるのを放棄してしまうのは、生徒さんにとって長い目でみてマイナスになってしまう可能性を恐れています。それよりも、
- なぜ違いがあるのか?
- そうする目的はなに?
- では自分はどうしたいのか?
のように『別の方向からの視点を知って自分で考えること』が芸術ではないかなぁと思っています。
生徒さんのレベルが上がってくると、これまで省略していた部分を含めるので、抽象的なアドバイスが増えていきます。
同じ先生なのに「言っていることが前回のレッスンと違う(・・;)」もそこそこ聞く話ですが、それは生徒さんの実力が上がった、といううれしい理由もしれませんよ〜