ラフマニノフ作曲『パガニーニの主題による狂詩曲』(パガニーニ・ラプソディ)第18変奏は、甘く魅惑的なメロディで大人に人気の曲です。
もともとはピアノとオーケストラによる作品(ピアノ協奏曲)であり、変奏曲形式で書かれています。なかでもロマンティックなメロディの第18変奏は、その人気の高さからピアノソロに編曲した楽譜も多く出版されています。
映画やCMでもよく使われているため、ほとんどの方はどこかで耳にしたことがあるでしょう。
今回は、初級から上級まで難易度順におすすめの楽譜を3つ紹介します。
ラフマニノフの曲のなかでは『比較的弾きやすい曲』
大人ピアノの憧れの作曲家としてよく名前が上がる、ロシアの作曲家ラフマニノフ。ロマンティックで超絶技巧。難易度の高い曲ばかりです。
『いちばん簡単なラフマニノフの曲は、なに?』『ピアノ学習者がはじめてラフマニノフの作品に挑戦するなら、どの曲が良いの?』という、なかなか難しい質問がありますが。。。
これに対して「鐘」や「エレジー」という答えを聞くことがあります。

「鐘」は知らない人はいないほど、ラフマニノフの作品の中で一番有名な曲かもしれません。オクターブをともなう重厚な和音の連続が、聴かせどころとなっています。
そのため手の小さい人には厳しい曲です。小指が短い私はどうにか和音を押さえられたとしてもギリギリ過ぎて、豊かな響きを表現するのは難しいため「自分向きではない」と、演奏するのは避けています(・_・;
また「エレジー」は6分程度とそこそこの曲の長さです。そのため気楽に取り組めるような曲ではありませんし、ガチクラシックファン以外にはあまり知られていません。
その点、この「パガニーニの主題による狂詩曲(パガニーニ・ラプソディ)第18変奏」は、
- 曲の長さが短め(3分〜4分まで)
- 一般的にもよく知られている曲
- さまざまなアレンジから選べる
という理由からチャレンジしやすい曲です。
決してかんたんとは言えませんが、はじめてのラフマニノフとしてもおすすめしたい曲なのです。
今回紹介する【上級アレンジ】は、手の小さめの人にとっても比較的弾きやすいアレンジになっています。
ちなみにこの曲は『原曲そのまま』にこだわる必要は、ほとんどありません。もとがオーケストラとピアノが共演する作品なので、主導権をオーケストラが握っている箇所で原曲のピアノパートそのままでは、メロディがなくなってしまうからです。
曲名の呼び方はいろいろありますが、すべて同じ曲
- ラフマニノフ作曲「パガニーニの主題による変奏曲第18変奏」
- ラフマニノフ作曲「パガニーニ・ラプソディ第18変奏」
- ラフマニノフ作曲「アンダンテ・カンタービレ」
すべて同じ曲を指しています。
「ラプソディ」とは「狂詩曲」のこと。「アンダンテ・カンタービレ」については、【上級アレンジ】で解説しました。
映画「ある日どこかで」使用曲
多くの映画やCMで使われてきましたが、個人的に推しなのは、1980年の映画「ある日どこかで」です。
クリストファー・リーヴとジェーン・シーモアの麗しきカップル、タイムトラベルの切ないストーリー、ラフマニノフの甘美なメロディの奇跡の組み合わせです。
以前のブログ記事で熱〜く語っています。ご興味ある方はぜひお読みください↓
【初級アレンジ】きらきらピアノおとなのピアノ名曲集 クラシックB
初心者にもチャレンジしやすい初級アレンジとしておすすめなのが、きらきらピアノ大人のピアノ名曲集クラシック レベルBに収録のアレンジです。編曲は轟千尋氏。

音の数が最小限になっていて弾きやすく、曲の長さもかなり短めになっています。ニ長調アレンジです。演奏時間は1分18秒程度。
曲の大事なエッセンスのみを残したアレンジですが、きまじめに音を追うだけでなく音楽的な揺れを表現すれば、十分に美しく演奏できるでしょう。
使用楽譜→きらきらピアノ おとなのピアノ名曲集 クラシック レベルB
【初中級アレンジ】きらきらピアノおとなのピアノ名曲集 クラシックC
次に紹介するのは、きらきらピアノおとなのピアノ名曲集クラシック レベルCに収録のアレンジです。
同じシリーズのレベルBから一歩進んだレベルCということで、手応えがあるアレンジとなっています。こちらも編曲は轟千尋氏。
譜読みがやさしいハ長調に移調になっていますが、先ほど紹介したクラシックBのアレンジよりも、音もリズムも複雑になり、和声の色合いもより深みを増しています。

ト音記号の上の段に書いてある音は右手で弾きます(青のペンでわかりやすく示してみました)。最初の伴奏形は左手から右手へと、なめらかにつながるように演奏します。演奏時間は2分17秒程度。
使用楽譜→きらきらピアノ おとなのピアノ名曲集 クラシック レベルC
【上級アレンジ】全音楽譜出版社 平井丈二郎編曲版
本格的なアレンジをお探しならば、おすすめしたいのが平井丈二郎氏の編曲です。
全音楽譜出版社のラフマニノフ小品集に収録。ピアノピース「アンダンテ・カンタービレ」としても出版されています。
「アンダンテ・カンタービレ」とは、第18変奏に書かれている音楽用語です。「アンダンテ」は、歩く速さで。「カンタービレ」は、歌うように。
このように曲名、曲のタイトルとして使われることもあります。

右手で16分音符、左手で3連音符を同時に演奏するポリリズム、両手が交差したり重なり合う部分も多く、さまざまなテクニックが要求されます。原曲と同じ変ニ長調です。演奏時間は約3分25秒。
使用楽譜→「ラフマニノフ小品集」全音楽譜出版社