クラシックにはさまざまな「花」の名曲があります。
かわいらしく素朴な花、悲しい伝説の花、華麗に咲きほこる花…あなたはどんな花が好みでしょうか?
今回は、さまざまな『花』にまつわるクラシック曲を紹介します。発表会や弾きあい会におすすめです。
入門レベル、初級レベル、中級レベルまで難易度がやさしい順に並べてみました。
おすすめしたい「花」のクラシック曲、今後も新たに追加予定です。
【入門】チューリップ姫の言ったこと/サティ
サティ作曲『短いこどものお話』の中の一曲「チューリップ姫の言ったこと」。
「ピアノ名曲120選初級編(バイエル〜ブルグミュラー程度)」に収録されています。
最初から最後まで、両手とも同じポジション(右手はレミファソラ、左手はファソラシド)のままで、白鍵だけを使った短い曲です。
楽譜のなかには、短い詩が書かれています。
チューリップ姫はどんなことを言ったのか?どんな風な口調なのか?…想像をふくらませて演奏することができますね。
【入門アレンジ】アマリリス/フランス民謡
フランス民謡「アマリリス」。よく知られた、かわいらしいメロディです。
たくさんのアレンジがありますが、今回は「ピアノで楽しむベストクラシック」に収録されているアレンジを取り上げました。
🎵ソファミレ/ミードのメロディでは、指くぐりのテクニックを使うことになります。右手のメロディは、オクターブを変えて2回繰り返されます。
初心者のうちは、すばやいオクターブ移動も難しいものです。基本テクニックの良い練習になるでしょう。
【入門】パリの花売り少女/ギロック
ギロック作曲「パリの花売り少女」。「はじめてのギロック」に収録されています。
ポジション移動が少ないため、入門レベルでも弾きやすいワルツです。
右手だけでなく左手もメロディを担当します。メロディは主役としてはっきりと、2〜3拍目の伴奏形は軽く演奏するとワルツらしさが出るでしょう。
「はじめてのギロック」は、大人のピアノ入門で最初におすすめする2冊の教本のうちの1冊です。
【入門アレンジ】南国のバラ/ヨハン・シュトラウス2世
ヨハン・シュトラウス2世作曲のワルツ「南国のバラ」。
「おとなのためのピアノ曲集クラシック編1」に収録されているのは、印象的な第2ワルツのメロディのみの短めアレンジです。
右手のメロディはレガートでなめらかに、左手の和音のスタッカートはウィンナ・ワルツをイメージして軽く演奏します。ワルツによくあるパターンです。
「おとなのためのピアノ曲集」は、やさしいレパートリーが欲しい大人のピアノ初心者におすすめしている楽譜です。
【入門】スイレン/ギロック
ギロック作曲の「スイレン」。「はじめてのギロック」に収録されています。
ポジション移動や左右の手の交差もあり、鍵盤の広い範囲を使う曲です。同じ「はじめてのギロック」の収録曲でも「パリの花売り少女」に比べて「スイレン」のほうが難易度が上になります。
楽譜に記載のとおり、ペダルをたっぷり使って演奏したい曲です。
スイレンが水の上で揺れているような不思議な響きが特徴的で、難易度のわりに聴き映えする小品です。
【初級】やさしい花/ブルグミュラー
ブルグミュラー25の練習曲より「やさしい花」。25曲の中の10番目に収録されています。
ブルグミュラーは「やさしい花」で、具体的にはどんな花をイメージして作曲したのでしょうか?そんなことを想像しながら弾いてみました。
ブルグミュラー25の練習曲は、ピアノ学習者にとって定番となっている教本です。それぞれの曲に練習の狙いがあります。「やさしい花」では前打音(装飾音)や、右手と左手の応答を曲のなかで学ぶことができます。
とは言っても、指の練習のためだけの『練習曲』と思ってはモッタイナイです!25曲すべて人前での演奏に向いている素敵な曲集です。
【初級】すみれ/ストリーボッグ
ストリーボッグ作曲「すみれ」。ブルグミュラー25の練習曲中盤あたりの実力で演奏できます。
ストリーボッグは、ピアノ初級の教育的小品をたくさん書いた作曲家です。「すみれ」は、はつらつな雰囲気のワルツです。
18小節からの右手にオクターブの連続があります。手の小さい方は、少々きついと感じるかもしれません。下の音は省略して上の音だけにしても良いでしょう。演奏するのが楽になります。
オクターブの部分は省略されている楽譜も、出版されています。
↑写真は上がピアノ名曲110選グレードA、下がドレミ楽譜出版社「おとなのための中級ピアノ曲集 バロックから近代まで」です。
ピアノ名曲110選グレードAの難易度は『バイエル後半からソナチネ・アルバム程度の初級向き』。「ブルグミュラー25の練習曲」のあとにおすすめしている名曲集です。
「おとなのための中級ピアノ曲集」は『中級』と楽譜のタイトルに付いていますが、実際は中級よりもやさしい曲が多い印象です。
ピアノ曲の難易度の感じ方は人それぞれ。万人が納得する難易度表は存在しません。難しい問題ですねσ^_^;
【初級】忘れな草/リヒナー
リヒナーの「忘れな草」。物悲しいメロディが印象的な曲です。こどもよりも大人に人気の一曲です。
リヒナーもストリーボッグと同じように、初級のピアノ学習者のためのやさしい曲をたくさん残した作曲家です。
技術的に難しいところはとくにありません。ただ、4ページとそれなりの曲の長さがあります。初級のレパートリーは短めの曲が多いので、はじめて長めの曲にチャレンジしたいときにも良いでしょう。
「忘れな草」は「忘れな草伝説」をもとにした曲とされています。
忘れな草伝説とは…
恋人から「あのかわいい花をとって!」とせがまれた青年が、崖におりて花をつかもうとした時、足をふみはずして崖下におちてしまいます。「私のことを忘れないで…」という言葉をのこして息をひきとった、という伝説もあります。
ピアノ名曲110選GRADE A 曲目解説より
曲の半ばで転調して明るくなる場面は、過ぎし日の楽しかった想い出を表現しているのかもしれません。
ピアノ名曲110選Aでは「すみれ」の次に収録されています。対照的な曲調の「花」の2曲。両方とも弾いてみるのも良いでしょう。
【初中級】野ばらに寄す/マクダウェル
マクダウェルの「野ばらに寄す」。
難易度が少しだけ上がります。ブルグミュラー25の練習曲を修了する実力が付いてからチャレンジしたい曲ですね。
9度(オクターブ以上)を同時に弾く場面があります。ストリーボッグ「すみれ」のオクターブ部分は省略して単音にしても構いませんが、「野ばらに寄す」の9度の響きはぜひ欲しいところです。
繊細なペダル使いも必要になります。控えめで、はかなげな美しさを持った小品です。
以前のブログ記事「ピアノで弾く『野ばら』の名曲3選〜シューベルト、ウェルナー、マクダウェル」でも取り上げた曲です。
ピアノ名曲110選グレードAに収録されています。
【初中級アレンジ】花のワルツ/チャイコフスキー
組曲『くるみ割り人形』より「花のワルツ」。だれもがメロディを知っている華やかなワルツです。
本来はオーケストラで演奏される曲ですが、初級〜上級レベルまで多くのピアノ編曲が出版されています。さすが人気曲ですね。
初中級者におすすめのアレンジを紹介します。
短い前奏から始まり、テーマのメロディがまず左手から始まります。右手だけに偏らず、左手も主役になれる素敵なアレンジが気に入っています。
おとなのためのピアノ曲集クラシック編2に収録されているのも、ほぼ同じアレンジです(最後の右手の和音がFis-A-Dか、Fis-Dかの違いのみ)。
使用楽譜→「おとなのためのピアノ小曲集〜バイエルからツェルニー30番併用」
【中級】花の歌/ランゲ
最後はランゲの「花の歌」です。ピアノ名曲集には必ず収録されている定番曲です。
ランゲが具体的にどの花をイメージしていたのかは不明です。でも、自分の美しさをはっきりと自覚している「セレブな?花」だろうと想像しています。
アルペジオを含む多彩な装飾が使われていて、曲の優雅さを引き立てています。
たとえば曲の冒頭4小節目の右手のアルペジオの和音は、花が開いていく場面のBGMに似合いそうだなぁと思いながら弾いています(YouTube動画13秒あたり)。
昭和の少女マンガの登場人物は、意味もなく背景に花を背負っていることがよくありましたが(ご存知でしょうか?)そんなイメージかな…
ピアノ名曲110選グレードBに収録されています。
グレードAよりも難易度は上になります。『ソナタ・アルバム、ツェルニー30番程度の中級向き』のレベルとなっています。
とは言っても「想像したほど、意外と難しくなかった(^_^)v」と、生徒さんから言われることも多い曲です。
ピアノにとって弾きやすいテクニックがふんだんに使われています。ピアノ発表会の定番なのは、練習の労力に比べて演奏効果が高いからなのです。
曲を聴いたイメージや楽譜の見た目よりも、実は楽に弾けるかもしれませんよ(^ ^)
まとめ
今回は、「花」にまつわるクラシック曲のおすすめを紹介しました。
お気に入りの曲は見つかったでしょうか?