「この曲は【ヘンデルのパッサカリア】となっていますが、本当の作曲者はヘンデルではないんですよ…」
レッスンでそんな話をしたところ、生徒さんに驚かれました。
ピアノ曲として人気の「ヘンデルのパッサカリア」が、実はヘンデルの作品ではない!なんて、ヤヤコシイ話ですよね。
実は、別の作曲家の名前で有名になったクラシック曲は、他にもいろいろあります。
ということで、今回は人気のクラシック曲から
- ヘンデルの「パッサカリア」
- カッチーニの「アヴェ・マリア」
- アルビノーニの「アダージョ」
- モーツァルトの「子守歌」
- バッハの「メヌエット」ト長調
- バッハの「メヌエット」ト短調
の6曲と、本当の作曲者の名前を紹介します。
ハルヴォルセン作曲『ヘンデルのパッサカリア』
まずは、ヘンデルのパッサカリア。
最近とくに人気のようで、ピアノ曲として聴く機会が増えました。
ヘンデルが鍵盤楽器のために作曲したのではなく、ノルウェーの作曲家ハルヴォルセンがヘンデルのメロディの一部分をもとに作った曲だと分かっています。
演奏したみたところ、バロック風味?のする現代的な音楽という印象です。
楽譜の見た目は8分音符が規則正しく並んでいて、ピアノで弾くのが簡単そうに思えるかもしれません。
ところが実際のところ左手は弾きやすい動きではありませんし、右手も似ているメロディの繰り返しが混乱しやすいです。
演奏難易度は初中級から中級程度でしょう。
ヴァヴィロフ作曲『カッチーニのアヴェ・マリア』
カッチーニの「アヴェ・マリア」は、前回のブログ記事で取り上げたばかりです。
本当の作曲者はカッチーニではなく、ロシアの作曲家ヴァヴィロフとのこと。
使用楽譜→クラシックを弾きたくて2
『カッチーニのアヴェ・マリア』は、ソプラノ歌手の伴奏で何度も演奏しました。カッチーニと言えば「アヴェ・マリア」と言われるくらいの定番曲です。
で、よく考えると私、カッチーニ本人の曲を演奏した経験はこれまで一度もないのですよねぇ…(・_・;
ジャゾット作曲『アルビノーニのアダージョ』
アルビノーニのアダージョは、チェロのレパートリーとして人気の曲です。これもピアノ伴奏で何度も演奏しています。
イタリアの音楽学者ジャゾットによる作品と言われていますが、演奏会のプログラムなどには「アルビノーニのアダージョ」とだけ書かれることも多いです。
カッチーニのアヴェ・マリアと同じく、アルビノーニ本人の曲はいまだに演奏したことがありませんm(_ _)m
「アルビノーニのアダージョをピアノで弾いてみたい」という生徒さんがいたので、弾きやすくて演奏効果の高いピアノアレンジ譜を探してみました。
使用楽譜→やさしく弾けるピアノ・ソロ クラシックを弾きたくて2
こちらの難易度は初級程度で、曲の長さは短めにまとめられています。
フリース作曲『モーツァルトの子守歌』
やさしく心地よいメロディのモーツァルトの子守歌。
長い間「モーツァルトの子守歌」として親しまれてきましたが、フリースの作品であるということが判明しています。
使用楽譜→おとなのためのピアノ曲集クラシック編1
鍵盤でのポジション移動も少なく、右手と左手のやりとりが美しいアレンジです。ピアノ初心者の学習用にも良いでしょう。
ペッツォルト作曲『バッハのメヌエット』ト長調&ト短調
ピアノを習う人が初めて弾くバッハの曲と言えば、たいてい「バッハのメヌエット」ト長調でしょう。
初級レベルの発表会定番曲でもあり、ト長調のメヌエットとト短調のメヌエットを続けて弾くこともありますね。
この2曲のメヌエットが、本当はペッツォルトの作品であるという話は、ピアノを弾く人にとって身近な話で、すでにご存じの方も多いかもしれません。
ペッツォルト(ペツォールト、ペツォルトと書かれることもある)は、バッハとほぼ同時代の作曲家です。
この曲は、出版社や楽譜によって作曲者の表記がさまざまです。たとえば、
- プレ・インベンション 全音楽譜出版社
- ピアノ名曲110選グレードA ドレミ楽譜出版社
では、作曲者名はバッハと書かれています。
- ピアノ名曲150選初級編 音楽之友社
では、ペツォルト(伝バッハ)
- おとなのための中級ピアノ曲集 ドレミ楽譜出版社
では、ペッツォルトとなっています(収録されているのはメヌエット ト長調のみ)。
【まとめ】歴史には変化がつきもの
日本史でも「肖像画の人物は実は別人」「歴史上のある出来事が起きたのは別の年だった」そんな事実が、のちの研究によって判明することがあります。
「いい国作ろう鎌倉幕府(1192年)」←語呂合わせで、鎌倉幕府成立の年を覚えた同輩の方もいらっしゃるのでは?本当の鎌倉幕府成立は別の年、ということになったようですが…
クラシック音楽の世界でも、これまで本当とされていたことが実は違うのですよ、という話が今後また出てくるかもしれません。
ちなみに、このブログ記事の最初の肖像画は音楽之友社「標準音楽辞典」昭和62年版からの引用です。左がバッハ、真ん中がモーツァルト、右がヘンデルだそうです。
えっと…
ほんとに〜??^^;