知る人ぞ知る名作映画「ある日どこかで」をご存知でしょうか?公開から40年以上経っても熱狂的なファンが増えているのは、ストーリーが魅力的なだけではありません。
ラフマニノフの曲とタイムトラベルの組み合わせが、映画を唯一無二のものにしているのではないでしょうか。
この映画について語ろうという私も、もちろんマニアックなファンの一人です。というわけで、映画「ある日どこかで」と音楽の奇跡の組み合わせについて、暑苦しく(?)語ってみます。
映画の予告編
映画「ある日どこかで」原題”Somewhere in Time”は1980年のアメリカ映画。主演は「元祖スーパーマン」と言えばこの人、クリストファー・リーヴです。
ジョン・バリー作曲のテーマ曲”Somewhere in Time”とともに、予告編をどうぞ。
マニアとしては、短い予告編だけでは映画の魅力を伝えきれないのが少々残念…
ポートレートの女性を求めて
しかし、ポートレートの女性(ジェーン・シーモア)が、めちゃくちゃ綺麗ですよね〜
一目で惚れちゃいそうですよね〜
ですよね〜?!
ね!!
「うん!惚れる!」と思った方は、次へどうぞ↓↓↓
ラフマニノフのメロディのタイムトラベル
映画の導入部(あらすじ)〜タイムトラベルのきっかけ
1980年、スランプに陥った作家リチャード(クリストファー・リーヴ)は、気まぐれなドライブの途中、湖畔に建つグランド・ホテルに立ち寄ります。
ホテルの資料館でポートレートのなかの美しい女性(ジェーン・シーモア)を目にした彼は、一目で心を奪われます。彼女のことが気になってしまい、頭から離れなくなります。
女性の名前はエリーズ。かつてホテルの劇場公演に出演した人気女優で、写真は1912年に撮影されたものでした。
今から68年も前の写真だったと知っても、エリーズに惹かれる気持ちを止められないリチャード。あらゆる手段を使って彼女のことを調べていくと…
『写真で一目惚れ』なんて
「見た目だけか!?ルッキズムだな」
なんて思ってしまいそうですが。
ストーリーが進んでいくと、この写真がどんなシチュエーションで撮影されたものなのかが分かる場面が出てきます。そうすると
「あぁ必然だったのね」
と…
おっと!まだ映画を見ていない方もいるでしょうから、これ以上は言わないでおきましょう。
ラフマニノフ作曲「パガニーニの主題による狂詩曲」第18変奏
映画の舞台は、1972年→1980年→1912年→1980年。
映画では、ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」第18変奏のロマンチックな旋律が何度も流れ、重要な役目を果たしています。
このメロディが最初にあらわれるのは1972年のエリーズ(気品ある謎の老婦人)がひとり物思いに沈むシーン。場面はそこから8年後、1980年のリチャード(若くして作家として成功、現在スランプ中)へとつながります。
8年の時の流れを同じ曲をそのまま、対照的な登場人物の心情とともに描いていて見事です。
映画の中盤も過ぎたころ、ふたりの気持ちが近づいていく湖のデートが印象的です。これは1912年の場面になります。小舟を漕ぎながら気分が乗ってきたリチャード、お気に入りのラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」の旋律を口ずさみます。
ところが、「パガニーニの主題による狂詩曲」は1934年の作品です。
1912年当時のラフマニノフはすでに作曲家として有名だったけれど、まだこの旋律は存在しないわけです。はじめて聴いた美しい旋律に反応するエリーズの言葉、リチャードとの会話のやりとりも、のちの伏線となっています。
ピアノソロ編曲版
さて、この曲はもともとオーケストラとピアノによる変奏曲の作品(演奏時間25分弱)ですが、とくに第18変奏の部分が有名になりました。演奏時間も3分〜4分と短く、ロマンチックなメロディが映画やCMと相性も良いのでしょう。ラフマニノフや曲のタイトルは知らなくても「この曲、どこかで聞いたかも?」と思う方が多いのではないでしょうか。
平井丈二郎編曲版のピアノソロ「アンダンテ・カンタービレ」(パガニーニの主題による狂詩曲より第18変奏)を演奏してみました。
使用楽譜→「ラフマニノフ小品集」全音楽譜出版社
ラフマニノフ「アンダンテ・カンタービレ」の他に「ヴォカリーズ」のピアノ版も収録されています。こちらも素敵な編曲です。
「パガニーニの主題による狂詩曲より第18変奏」一曲のみで良いのなら全音ピアノピースもあります。
第18変奏【以外の部分】
先ほど書いたように「パガニーニ・ラプソディ」は第18変奏の部分が特に有名になりましたが、もともとは22〜25分程度の協奏曲です。映画で興味を持たれた方は、この機会に曲を最初から聞いてみるのも面白いと思います。
第18変奏のロマンティックなイメージだけで曲の冒頭を聴いてみると「えっ?ほんとに同じ曲なの?」と思われるかもしれません。
ラフマニノフ自作自演による演奏のCDも残されています。
ジョン・バリー作曲”Somewhere in Time”
まずラフマニノフから取り上げましたが、映画のテーマ曲はジョン・バリーの作曲”Somewhere in Time”です。
こちらも演奏してみました。
使用楽譜→ヤマハぷりんと楽譜 ピアノソロ Somewhere In Time ある日どこかでこの曲もいくつか編曲楽譜が出ています。こちらはシンプルなものを選びましたので難易度は低めです。映画のイメージに合わせて、最後の部分は楽譜通りではなく少々変更しました。
この曲もラフマニノフと同じように映画のさまざまなシーンで使われていますが、シチュエーションによってテンポが違っています。
その影響で同じメロディなのに心躍るように聞こえたり、あるときは悲しげに聞こえたりします。どの場面でどういったテンポで…と具体的に書くとネタバレになってしまうので、ここまで!
とは言え、たとえストーリーの結末までのあらすじを知ってから観たとしても、映画の魅力は損なわれないでしょう。
この映画をおすすめしたい人
予告編の肖像写真に惹かれた人
映画のリチャードと同じように写真の女性に惹かれたなら、選択肢は一つ。クリストファー・リーヴになったつもりで時を超え、彼女に会いに行きましょう!
ラフマニノフ好きな人
ラフマニノフ好きならばもちろんパガニーニ・ラプソディはよ〜く知っていると思いますが、曲と映画の奇跡の組み合わせを味わって欲しいですね♪
ラフマニノフは2023年に生誕150年を迎えて、ますます演奏の機会が増えています。
美男美女の恋物語で現実逃避したい人
クリストファー・リーヴ&ジェーン・シーモアという現実離れしたクラシカルな美男美女が、湖畔のホテルで出逢う物語…現実逃避に最適です。
タイムトラベル+ラブストーリー+ファンタジー好きな人
は〜い\( ˆoˆ )それは私です!
時空を超える方法は違うけれど、映画「きみがぼくを見つけた日」(レイチェル・マクアダムス&エリック・バナ出演)が好きな人は、きっと「ある日どこかで」も気に入るでしょう。
ここまで飽きずに記事を読んでしまった人!
マニアによるマニアのためのマニアックなブログ記事を、ここまで飽きずに読んでしまったなら、観るべし!
【おまけ】奇跡の組み合わせが、ここにも
ジェーン・バーキン&ジョン・バリー
先日、女優ジェーン・バーキンが亡くなったとのニュースがありましたが、ジョン・バリーとジェーン・バーキンは結婚していた時期があったことを、はじめて知りました!(◎_◎;)
才能のある人同士、惹かれるものなのですね。この組み合わせも、つくづくスゴイ!