ピアノ教本の選び方は正解がない悩ましい問題です。
「ブルグミュラー25の練習曲」が修了したあとに使う楽譜はどれにするのか?
ツェルニー30番、ソナチネアルバム、プレ・インベンション、ブルグミュラー18の練習曲…ピアノ教室の考え方や生徒さんの個性や傾向によっても変わるでしょう。
私が主宰している【大人のためのピアノ教室studio-S】のレッスンでは、大人の生徒さんにドレミ楽譜出版社『ピアノ名曲110選グレードA』をおすすめすることが多いです。
今回の記事では「ピアノ名曲110選グレードA」がおすすめの理由を
- 「ピアノ名曲110選」の特徴、他の教本との比較
- 収録曲一覧、難易度、YouTube動画
- 併用教本と次の楽譜は?
という視点から解説していきます。
ドレミ楽譜出版社「ピアノ名曲110選」とは?
「ピアノ名曲110選グレードA」の特徴
ドレミ楽譜出版社「ピアノ名曲110選」は、全3巻から構成されているクラシック曲の名曲集です。
やさしい順にグレードA→グレードB→グレードC。3巻すべて合わせて110曲収録されています。
ブルグミュラー25の練習曲のあとにおすすめしたいのは、初級編にあたるピアノ名曲110選グレードAです。
グレードAの難易度はバイエル後半からソナチネ・アルバム程度で、全52曲収録されています。
おすすめの理由は、
初級レベルの発表会の曲選びにも使える
さまざまな作曲家のよく知られた名曲がバランス良く収録されている
「先生が弾かせたい曲」より「生徒が弾きたい人気曲」のレパートリーが中心
全音、音友など他社の名曲選(初級)と比べて難易度がやさしめで弾きやすい
生徒さんにとって「知っている曲、どこかで聞いたことのある曲」を自分で演奏できるようになるのはうれしいことですし、弾きたい曲を中心にレッスンを進めるほうが上達は早いです。
ほかのピアノ教本との比較
「ソナチネアルバム」や「プレ・インベンション」や「ツェルニー」は、一冊まるごとが特定の時代の、特定の形式による曲集として作られている『専門的な教本』です。
好みや嗜好に合うと興味深く進められますが、面白さを感じられないと苦痛になってしまいます(・・;)
なので、万人におすすめできる楽譜ではないと思っています。
誤解のないように追加すると、上に挙げた楽譜はどれも勉強になる良い教本です。生徒さんの嗜好に合わせて個人的におすすめしています。
それに対してピアノ名曲110選はバラエティに富んだ選曲になっているため、ぜったいに好みのタイプの曲が見つかるはずです。
もし気に入る曲がまったくなかったとしたら
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残念ながら、クラシック曲そのものが好みではないのかも!?!(◎_◎;)
ピアノ名曲110選の通常版とプレミアム版を比較、何が違うの?
私は、ピアノ名曲110選グレードAはプレミアム版を、グレードBは通常版を持っています。
プレミアムは表紙に凹凸がある紙が使われていて、見た目に独特の高級感があります。高級な名刺のような紙質に近いイメージでしょうか。値段は200円ほど高いです。
通常版はツルっとした、ごくふつうの紙質です。文字のデザインも少々違いますね。
中身の楽譜や曲目解説などそのほかの部分は、どちらを選んでも変わらないようです。
「ピアノ名曲110選グレードA」の収録曲と難易度
次に「ピアノ名曲110選グレードA」に収録されている曲目、全52曲を紹介します。
基本的に収録順に練習を進めて良いのですが「収録順のわりにやさしめ、難しめ」という波がありますので、参考までに曲順との相対的な比較としての難易度を書いてみました。
初級の生徒さんの場合、速い指の動きが要求される曲よりもポリフォニー(多声)要素がある曲を難しく感じる傾向にあるようです。
やさしめの曲には(易)、難しめの曲は(難)などと添えています。ふつうレベルの曲には何も記していません。
青字になっている曲目のリンクをクリックするとYouTube動画にとびます。楽譜の収録順に連続再生したい場合は、この章の最後の再生リストをご利用ください。
1,お人形の夢と目ざめ/オースティン
8,マーチ/K.P.E.バッハ(やや難)
10,前奏曲/バッハ
11.ガヴォット/バッハ(難)
12,セレナード/ハイドン(難)
13,ゆかいな鍛冶屋/ヘンデル(やや難)
14,ラルゴ/ヘンデル(難)
15,サラバンドと変奏/ヘンデル(難)
16,ティロリアンヌ/ルンメル(易)
17,ラッパ手のセレナード/スピンドラー(易)
18,楽しい狩人/メルケル
19,蝶々/ゲール
20,メロディー/シューマン
21.兵隊の行進/シューマン
22.小さな狩の歌/シューマン
23.勇ましい騎手/シューマン
24,楽しい農夫/シューマン
25,ロマンス/シューマン(難)
26,知らない国々/シューマン(難)
28,ワルツ/チャイコフスキー
29,ガヴォット/ゴセック(難)
30.かっこう/ダカン
31,タンブラン/ラモー
32,水車/イェンセン
33.ロンド イ短調/ディアベリ
34,メヌエット/ボッケリーニ
37,かっこうワルツ/ヨナーソン(易)
38,ウィンナ・マーチ/ツェルニー
39,あやつり人形/ローデ(易)
40,紡ぎ歌/エルメンライヒ(易)
41,ウォータールーの戦い/アンダーソン=ギルマン(難)
42,間奏曲/シューベルト
43,ジョスランの子守歌/ゴダール
44.前奏曲/アルベニス
45,クシコス・ポスト/ネッケ
46,アヴェ・マリア/グノー(易)
47,エリーゼのために/ベートーヴェン(易)
49,トルコ行進曲/ベートーヴェン(易)
50,さらばピアノよ/ベートーヴェン
52.きらきら星変奏曲/モーツァルト(難)
再生リストはこちら↓(現在YouTube動画更新中です)
使用楽譜→ピアノ名曲110選グレードA
「グレードA」の併用曲集は?次の楽譜は?
ピアノ名曲110選グレードAは、全52曲から興味を持った曲を抜粋して演奏したあと次の楽譜に進んでも良いですし、気分転換に他の定番教本に手を出してみるのも良いでしょう。
ステップアップのルートはさまざまですが、例として4つのパターンをあげてみます。
パターン1「プレ・インベンション」
「ピアノ名曲グレードA」を弾いてみて
バッハやヘンデルの曲って、かっこいいなぁ
と感じたなら「プレ・インベンション」を併用して、ポリフォニー(多声音楽)に本格的に取り組んでみては?
クリーガーの「メヌエット」、W.F.バッハの「春」など、バッハの「インベンション」前に学習すべきバロック、古典の名曲が56曲収録されています。
名曲110選と重なる曲目もありますが、楽譜による解釈の違いを楽しむのも面白いでしょう。
パターン2「ソナチネアルバム」
ベートーヴェンやモーツァルトのもっと難しい曲に挑戦してみたい
と思ったあなたは、次の教本に「ソナチネアルバム」→「ソナタアルバム」を目指すのが良いでしょう。
初級(ブルグミュラー)→中級(ソナチネ)→上級(ソナタ)は、よくあるピアノ教室の進度とレベル分けの目安とされるような教本です。いわゆる王道コースですね。
パターン3「ロマン派ピアノ小品集」
やっぱりショパン、シューマン、チャイコフスキーみたいなロマン派の音楽に惹かれるなぁ
それなら次は、ヤマハピアノライブラリー「ロマン派ピアノ小品集4」はいかがでしょう?
ショパンのやさしいワルツやポロネーズ、メンデルスゾーンの無言歌集の曲、グリーグのアリエッタなど、ロマン派の時代の魅力的な小品が収録されています。
名曲110選と重なる曲目も含まれています。
パターン4「ピアノ名曲110選グレードB」
もちろん、そのまま「ピアノ名曲110選グレードB」に進んで、レパートリーのステップアップを目指すルートも。
ドビュッシー「アラベスク第1番」やショパン「ノクターン作品9-2」、ベートーヴェン「ソナタ悲愴第二楽章」など、大人のピアノ憧れ曲を含む全35曲が収録されています。
ちなみに「ツェルニー練習曲」は?
そもそも…の話なのですが、私は「ブルグミュラー25の練習曲」は「練習曲」のカテゴリーではなく、演奏のための曲としてレッスンしています。
それに対してツェルニーの練習曲は「練習曲」カテゴリーと考えて、「名曲選」と併用している場合が多いです。
↑↑この話は、また別の機会に書いてみます。
【まとめ】名曲集でクラシック曲を俯瞰してみる
今回はブルグミュラー25の練習曲の次に、ドレミ楽譜出版社の「ピアノ名曲110選グレードA」に進むのがおすすめの理由を解説しました。
ピアノは実力がついてくると、自分が目指したい方向も曲の難易度も判断がつきやすくなりますが、初級の段階では楽譜選びから迷ってしまうことでしょう。
迷ってしまったら、まずコレから!
バラエティに富んだ曲を演奏することで、クラシックのピアノ曲の世界をざぁ〜っと俯瞰することから始めてみてはいかがでしょうか?