昨年11月、不注意により自転車で転倒。その際に右肩を強打し、大きな衝撃と痛みに嫌な予感が…:(;゙゚’ω゚’):
診断結果は右鎖骨遠位端骨折。3泊4日の入院で手術を受けました。
現在は術後2ヶ月経過して、週2回程度リハビリ通いの日々を送っているところです。ピアノを両手で不自由なく弾けるようになるのは、もう少し先になりそう…
この機会に「左手のためのピアノ曲」を調べてみました。
実際に自分で演奏した曲や、将来的にいつか演奏してみたいと思っている魅力的な小品を紹介します。
スクリャービン「左手のためのプレリュードとノクターン」
スクリャービンの曲は、もともと大好きです。左手のための曲があるのも知っていて「いつか弾いてみたいなぁ♪」と思っていました。
でも、その「いつか」は右手を怪我でもしない限り、なかなかやって来なくて…今から2年前のこと、調理中に右手を火傷して、そんな機会が思いがけずにやってきてしまいました(>_<)
そのとき演奏したのはスクリャービンの「左手のためのノクターン」Op.9−2です。スクリャービンらしい官能的な曲です。私にとって初めての「左手のための曲」チャレンジとなりました。
作品番号だけを見ると、ショパンの一番有名なノクターンOp.9-2と一緒ですね。
楽譜は、春秋社スクリャービン全集7にプレリュードOp.9-1、ノクターンOp.9-2の2曲とも収録されています。
ヴェーラ・ゴルノスターエヴァによるNHK趣味百科 ピアノで名曲を〜バッハからプロコフィエフまで〜には、プレリュードOp.9-1のみ入っています(下の写真、中央手前)。
過去のNHK趣味百科のシリーズは、講師のピアニストによる解説が勉強になります。そのまま楽譜として使うことも可能。
それに、生徒役としてレッスンを受けていた出演者が、いまは大活躍しているピアニストになっているのを発見して驚くことも!
現在テキストは、メルカリやAmazonなどを経由して中古を手に入れることしか出来ません。
フランク・ブリッジ「3つの即興曲」
フランク・ブリッジはイギリスの作曲家。ベンジャミン・ブリテンの師匠として知られています。
チェロとのアンサンブルで初めて彼の作品を数曲演奏したとき「いままで知らなかった作曲家だけれど、素敵な曲!」と思い、それ以来気になっていました。
左手のために作られた「3つの即興曲」(インプロヴィゼーション)は、ピアニスト舘野泉氏が、病気からの再起のきっかけとなった曲としても知られている作品です。
2023年12/21日経新聞夕刊のコラム↑です。ちょうど、左手のためのピアノ曲を探しているタイミングで見つけました。
1曲目at dawn、2曲目a vigil、3曲目a revelの3つから構成されています。英語のタイトルは韻を踏んでいるのかもしれませんね。
舘野泉氏のCD「風のしるし〜左手のためのピアノ作品集」では1曲目「夜明けに」、2曲目「夜のお祈り」、3曲目「酒宴」と訳されているようです。
ちょっと和風?なエキゾチックな響きが神秘的な2曲目、派手な曲想の3曲目を気に入り、いま練習中です。
楽譜はAmazonで輸入版を手に入れることができます。人気の「おとぎ話組曲」も収録されていて、こちらもそのうち演奏したみたい曲です。
ショパン=ゴドフスキー「左手のための別れの曲」
ゴドフスキーは「ショパンのエチュードによる練習曲」を53曲編曲しています。
ショパンのエチュードよりも曲数が多くなっているのは、1つの曲に対してアレンジが何種類かあるためです。
左手だけのために作られた曲もあり、ショパンOp.10−3「別れの曲」もその一つ。
ショパンの原曲はE Dur、ゴドフスキーの編曲はそれより増2度低いDes Durです。
今回はこちらを演奏してみました。
「だれもが知る有名曲のアレンジだから、ウケが良さそうだし」という不純な動機もあったりしてσ^_^;
難しい中間部を練習していると、右肩のキズが痛みます(>_<)ふだん右手で弾くような高音部まで左手で演奏する時には、右半身の筋肉もそれなりに使うのですよね…
そんな理由で、今回は中間部は大幅にカットしました。前半部と後半部をつなぎあわせたショート・バージョンにアレンジして弾いています。
楽譜はペトルッチ楽譜ライブラリーを使用しました。
吉松隆「3つの聖歌(ピアノ左手のために)」
邦人作曲家、吉松隆氏による左手のための曲です。
シューベルト「アヴェ・マリア」、カッチーニ「アヴェ・マリア」、シベリウス「フィンランディア讃歌」から構成されています。楽譜は未見ですが、どれも興味あり!
楽譜は、音楽之友社「舘野泉 左手のピアノシリーズ」吉松隆 3つの聖歌ほかに収録されています。
中村紘子氏の著書「チャイコフスキー・コンクール」から〜「左手の曲」を弾くとは?
ピアニスト中村紘子氏の著作「チャイコフスキー・コンクール ピアニストが聴く現代」。
本が書かれたのは1988年。ピアニスト本人が書いた本の中では異例の大ヒットとなり、当時10代だった私も読みました。
第10章「コンクール優勝者が多すぎる」には、こんなエピソードが書かれています。
チャイコフスキー・コンクール本選でファイナリスト(本戦出場者)のひとりが演奏するラヴェルの「左手のための協奏曲」を聴いた、ある審査員の一言。
「この人は両手を使ってさえも上手く弾くことができないのに、なんで片手しか、それも左手しか使わない曲なんて選んだのでしょう」
中村紘子「チャイコフスキー・コンクール ピアニストが聴く現代」
もう〜、この一言があまりにも強烈すぎて((((;゚Д゚)))))))
他にも興味深い話がたくさんあったはずなのに、この本で記憶に残っているのはココだけです。
まぁ、気にしすぎると「左手のためのピアノ曲」を演奏するのにプレッシャーがかかってしまうので、適当に…
まとめ
「右手だけで弾くピアノ曲」はあまり聞きませんが、「左手だけで弾くピアノ曲」には名曲が多いです。
戦争や病気や怪我、なんらかの理由で右手が不自由になったピアニストのために、多くの作曲家が「左手のためのピアノ曲」を書いています。
今回は教室の「ピアノ弾き合い会」が1月に控えていたので、比較的短めの曲を中心に探してみました。
- 練習しすぎて右手を痛めてしまった
- 怪我でしばらく右手が使えない
そんなときもピアノそのものを弾くのを諦めるのではなく、「左手のための曲」を見つけて練習してみるのも良いでしょう。
左手の練習になるのはもちろんですが、「この和音で、この運指!?このメロディラインを聞かせるためには、どう弾こう?」など、ふだん使わない脳みそが刺激される、なかなか新鮮な経験です。