『不適切にもほどがある!』かもしれない?クラシックのピアノ曲

音楽の雑談話

年月とともに常識も非常識も変化するもの。クラシック音楽の世界にも「数十年前はふつうだったのだろうけれど、現代では違和感があるかも…?」と思える曲名や表現があります。

  • 価値観の変化によりタイトルが変更された曲
  • もしかすると今後は変わる可能性もある?曲名
  • この曲調は人種差別では?と感じる微妙な曲調

今回は歴史的な背景も考えつつ、不適切かもしれない?クラシックのピアノ曲を紹介してみます。

【このブログ記事には不適切な表現が含まれていますが、作曲された時代の文化を真面目に考察する上で敢えて使用しています】

ドビュッシー「小さなくろんぼ」→「小さな黒人」

価値観の変化によって曲名が変更された曲として思い浮かぶのは、ドビュッシーの「小さな黒人」です。

自分が小学生のころ、1980年代に演奏したときの日本語の曲名は「小さなくろんぼ」でした。今では「小さな黒人」という曲名のほうが一般的になっています。

写真上は全音ピアノピース「小さなくろんぼ」、写真下は音楽之友社「ドビュッシーピアノ曲集8」

現在も「小さなくろんぼ」として出版されているのは、おそらく全音のみです。音楽之友社やヘンレ版、ほかの出版社の名曲選では「小さな黒人」という訳になっています。

次に、三省堂の「クラシック音楽作品名辞典」でも見てみましょう。

「クラシック音楽作品名辞典」は現在のようにネットが発達していなかった時代に、正式な曲名を調べてプログラム用に提出するために必ず使っていた辞典です。

1987年発行の辞典↓を調べてみると「小さな黒ん坊」となっています。

それに対して改訂版のクラシック音楽作品名辞典 第3版(2009年)↓

ここでは「小さな黒人」と変更されています。

原題のフランス語negre、英語のnigar、これは改訂版でも同じです。ただ、英語はNワード(差別用語)として、現在ではふつうの状況では使われなくなりましたね。

シンコペーションで軽快な曲調を考えると、1909年に作曲したドビュッシーに差別意識は感じられません。

ただ、このような単語を使った曲が現代に新しくできるだろうか?と考えると、まぁ無いだろうな…と思います。

ちなみに〜絵本「ちびくろ・さんぼ」

絵本「ちびくろ・さんぼ」が差別的だとして、絶版になったことがありましたね。

ドビュッシーの「小さなくろんぼ」を見ると、この本を思い出します。

こどもの頃のお気に入りの絵本で、何度も読んだものです。トラがぐるぐる回ってバターになるところや、ホットケーキの描写がとても美味しそうで大好きでした(*^▽^*)

リヒナー「ジプシーの踊り」

音楽の世界では「ジプシー」は、独特の雰囲気を持った存在として、多くの作品に使われてきました。踊り子や占い師などエキゾチックで神秘的なイメージもあり、芸術家の創作意欲を刺激するのでしょう。そんなジプシーが登場する代表的な作品に、ビゼー作曲のオペラ「カルメン」があります。

ピアノ曲としては、リヒナーの「ジプシーの踊り」が有名です。初級レベルの発表会定番曲として、昔も今も人気です。

使用楽譜→ピアノ名曲110選A

現在NHKでは「ジプシー」という言葉は差別用語として使用されていません。その代わり「ロマ」に言い換えられているようです。

演劇や音楽の世界に言い換えの圧力(・・?)は、まだ来ていないと思います…

が、そのうち曲名が「ロマの踊り」に変更になったとしたら…曲のイメージがわかなくなってしまいますねぇ(^^;;

ギロック「インディアンの踊り」「のろし」など

ギロックの曲には「インディアンの⚪︎⚪︎」という曲が多く存在しています。「インディアン」「ネイティブ・アメリカン」と言い換えが進んでいます。ただ、ギロックで気になるのは、曲名よりも共通して流れる曲調です。

ビギナーのためのピアノ小曲集「はじめてのギロック」には「のろし」「インディアンの雨乞いダンス」「インディアンの戦いのうた」「インディアンの踊り」と、インディアン関連の曲が合計4曲見つかります。

ギロック「インディアンの戦いのうた」
ギロック「インディアンの雨乞いダンス」
ギロック「のろし」

「インディアン」が曲名に入っていない「のろし」ですが、これもインディアンを意識した曲であろうことは、曲調から明らかです。「インディアン」の曲と共通のリズムが、何度も繰り返されているのです。

完全5度の音程(レとラ、ソとレの音)で同じリズムの繰り返しは「ちょっとインディアンに対するイメージがステレオ・タイプ過ぎるんじゃないの〜?」という気がします。

使用楽譜→はじめてのギロック

ちなみに〜ディズニー映画「ピーターパン」のインディアン

「英会話学習のためにはディズニー映画を教材にすると良い」と聞いて、大人になってから英語字幕で勉強した経験があります。5年ほど前のことです。

そのときに使ったのは「シンデレラ」「白雪姫」「ダンボ」「ピーターパン」など、比較的古い時代に作られたディズニー映画。こどものころから数十年ぶりに改めて映画を見てみると、古い価値観にびっくりしてしまいました( ゚д゚)

とくに「ピーターパン」に登場するインディアンの描写が偏見のオンパレード。野蛮な民族とのイメージで見ているようで「えっ!?ピーターパンってこんな映画だったっけ?これはマズイでしょ!」

きっと映画が作られた当時の価値観としては、ふつうだったのでしょう。自分がこどもの頃に「ピーターパン」を見た時には、とくに差別だと感じたことはありませんでした。時代の変化とともに、こちらの感じ方も変わったのかもしれません。

ギロックのインディアンの曲にも似たような雰囲気を感じることがあり、ときどき微妙〜な気持ちになります。20世紀半ばの文化としては、そんなものなのかも?

「はじめてのギロック」は初心者用のピアノ教材として素晴らしいので、レッスンで使っていますし、今後も変わらずに使い続けるつもりですが。。。

おまけの一言

ドラマ『不適切にもほどがある!』もちろん観ています!面白い〜\( ˆoˆ )/

タイトルとURLをコピーしました